仕事ができるほど仕事が増える。「できる人」を「いつもやる人」にしない
仕事ができる人には、仕事が集まりやすいです。
早い。
ミスが少ない。
説明が少なくても進む。
困ったときに頼れる。
頼む側から見れば、その人に任せたくなるのは自然なことだと思います。
だから、仕事を任されること自体が悪いわけではありません。
信頼されていることもある。
経験になることもある。
面白い仕事へつながることもあります。
ただ、気をつけたいことがあります。
「できる」が、いつの間にか「いつもやる人」に変わることです。
一度できたことが、そのまま自分の仕事になっていく
最初は、ちょっと手伝っただけだった。
誰かが困っていたから、代わりに処理した。
急ぎだったから、自分がやった。
トラブルだったから、詳しい自分が入った。
その一回は、たぶん間違っていません。
必要だったから動いた。
自分ならできた。
それで全体が進んだ。
でも、それが何度か続くと、少しずつ意味が変わることがあります。
「あの人に聞けば分かる」
「あの人に頼めば早い」
「あの人がやってくれる」
そして気づくと、正式に担当が変わったわけでもないのに、そこが自分の仕事のようになっている。
一度できたことと、これからも自分が持つ仕事であることは別です。
ここを分けないと、能力の高い人ほど役割が静かに増えていきます。
能力と責任は、同じではない
できること。
助けられること。
担当であること。
最後まで責任を持つこと。
これは、全部同じではありません。
自分に知識があるから、相談には乗れる。
経験があるから、一時的に手伝える。
でも、それだけで今後ずっと自分が担当することが決まるわけではありません。
私はここを、かなり大事にしています。
できる人であることと、やる責任がある人であることは別です。
能力は「できる」を示します。
責任は「誰が持つか」の話です。
この二つを同じにすると、仕事ができる人ほど、自分の役割の外側まで持つことになります。
新しい仕事を持つなら、何を手放すかも決める
仕事は、足し算だけでは続きません。
新しい仕事を一つ持つなら、本当は何かが変わるはずです。
優先順位を変える。
今までの仕事を誰かへ渡す。
期限を調整する。
役割を正式に変える。
必要な権限を持つ。
評価する内容も変える。
でも現実には、「これもお願い」が積み重なって、元の仕事はそのまま、ということがあります。
そうなると、仕事が増えたというより、責任の範囲だけが広がり続けます。
だから新しい仕事を持つときは、
「これを持つなら、何を手放す?」
まで考えた方がいいと思います。
これは「仕事を減らしたい」と言っているのではありません。
新しく持つ責任を、ちゃんと仕事として扱うためです。
できないふりをする必要はない
仕事ができると仕事が増えるなら、できないふりをした方が得なのか。
私は、そうは思いません。
自分の能力を隠す必要はない。
困っている人を見ても、全部見ないふりをする必要もない。
助けたいなら、助けてもいい。
自分にしかできないことなら、自分から動いた方がいい場面もあります。
問題なのは、能力や親切そのものではありません。
能力と親切が、そのまま恒常的な責任へ変わることです。
一時的に助ける。
相談に乗る。
必要なところまで一緒にやる。
そして、本来の担当へ戻す。
そういう関わり方もできます。
できる人でありながら、何でも自分の仕事にはしない。
その方が、能力を長く使えると思います。
組織の穴を、一人で埋め続けなくていい
仕事が集まると、自分がやらなければ回らないように感じることがあります。
実際、自分がやった方が早いこともあります。
自分が抜けたら止まる仕事もあるかもしれません。
でも、その状態が続いているなら、それは個人の頑張りだけで解決する話ではありません。
誰が担当するのか。
どう共有するのか。
誰でもできるようにするのか。
それとも、本当に自分の役割として持つのか。
どこかで決め直す必要があります。
自分が毎回助けることで、とりあえず今日の仕事は回ります。
でも、そのままでは「自分がいれば回る」が「自分がいないと回らない」に変わります。
できる人が組織を支えることと、できる人が組織の穴を全部抱えることは違います。
握らない強さ
私は、自分がやるべき一手は打つけれど、その先まで全部を自分の責任にしないことを、握らない強さと呼んでいます。
仕事ができる人ほど、この考え方は必要になることがあります。
できるから、助ける。
知っているから、伝える。
必要だから、一度引き受ける。
でも、そこで終わらせず、
これは一時的な支援なのか。
今後も自分が持つ役割なのか。
新しく持つなら、何を手放すのか。
そこまで分ける。
能力は残す。
親切も残す。
でも、能力を理由に責任まで自動的に引き取らない。
それでいいと思います。
今日のちょっと
いま自分に集まっている仕事を一つだけ思い浮かべてみてください。
そして、こう分けてみます。
「これは手伝える仕事か。それとも、私が持つ仕事か。」
もし「私が持つ仕事」なら、もう一つ。
「これを持つ代わりに、何を手放す?」
仕事を減らすためではなく、自分の役割を見えるようにするために。