NICE SKILL

相手を変えようとして疲れる。伝えることと、変えることを分ける

「もう少しこうしてくれたらいいのに」

人と関わっていると、そう思うことがあります。

もっと話を聞いてほしい。

もう少し連絡してほしい。

約束したことは守ってほしい。

仕事なら、ここは直してほしい。

家族なら、これくらい分かってほしい。

関係をよくしたいからこそ、相手に変わってほしいと思うことがあります。

だから、相手を変えたいと思うこと自体を悪いとは思いません。

ただ、何度言っても変わらない。

説明しても伝わらない。

同じことが繰り返される。

そうなると、相手より先に自分が疲れていきます。

そんなときに分けたいのは、

伝えることと、変えることです。

自分の希望や困りごとは伝えられる。

一緒に決めたいことは話し合える。

でも、伝えたあとに相手が変わるかどうかまで、自分の仕事にはできません。

「変わってほしい」の中には、伝えるべきこともある

相手は変えられない。

だから何も言わない。

私は、それも少し違うと思っています。

困っていることがあるなら、伝えていい。

嫌なことがあるなら、嫌だと言っていい。

一緒に暮らしているなら、生活の約束を話し合っていい。

一緒に仕事をしているなら、役割や期限を確認していい。

大切な人なら、こうしてもらえるとうれしいと伝えてもいい。

それは相手を支配することではありません。

自分の側にある情報を、相手へ渡しているだけです。

言わなければ、相手には分からないことがあります。

だから、

「相手を変えようとしない」

と、

「何も伝えない」

は同じではありません。

一度伝えたあと、何を握っているかを見る

疲れやすいのは、伝えたあとかもしれません。

「分かった」と言ったのに、また同じことをする。

お願いしたのに、やってくれない。

説明したのに、考え方が変わらない。

すると、もう一度説明したくなります。

別の言い方なら伝わるかもしれない。

もっと強く言えば分かるかもしれない。

理由を全部説明すれば納得するかもしれない。

もちろん、説明不足だったなら補えばいい。

約束したことなら確認していい。

でも、必要なことを伝えたあとも、相手が自分の望む結論になるまで働きかけ続けると、こちらの仕事が終わりません。

そこで一度、

「私は、伝えたいのか。変えたいのか。」

と分けます。

話し合えることと、相手が決めることは別

人との関係には、一緒に決めることがあります。

約束。

役割。

会う時間。

生活の分担。

仕事の進め方。

お互いに守りたい境界。

こういうことは、

「相手の自由だから」

で終わらせる話ではありません。

一緒に決めることだから、相談します。

決めたことが守られないなら、確認もできます。

必要なら約束を変えることもできます。

でも、相手の性格そのもの。

価値観そのもの。

こちらへの好意。

何を大事にするか。

最終的にどう生きるか。

そこは相手が決めることです。

共同で決めることは話し合う。相手が決めることは相手に残す。

この二つを混ぜないようにします。

「分かってもらう」までをゴールにしない

自分の言い分が正しいと思っていると、相手にも同じように理解してほしくなります。

「普通はそう思うでしょう」

「ここまで説明したんだから分かるでしょう」

そう感じることもあります。

でも、人は同じ説明を聞いても同じ結論になるとは限りません。

自分の考えを説明する。

必要な事実を伝える。

相手の考えも聞く。

そこまではできます。

でも、最後に

「あなたも私と同じ考えになって」

まで求めると、相手の中へ入っていくことになります。

理解してもらえたらうれしい。

納得してもらえたら助かる。

でも、同意まで自分で作ることはできません。

変わらない相手を見て、自分の次を決める

相手が変わらないとき、できることがなくなるわけではありません。

自分の伝え方を変えることもできます。

約束を具体的にすることもできます。

距離を変えることもできます。

手伝う範囲を変えることもできます。

一緒にやる方法を変えることもできます。

その関係を続けるかどうかを考えることもできます。

大事なのは、

相手を動かす方法を探し続けることではなく、

今いる相手を見たうえで、自分がどうするかを決めることです。

「変わってくれたら続けられる」

だけではなく、

「今のままなら、私はどうする?」

も考えられます。

これは諦めることとは少し違います。

現実にいる相手を、そのまま判断材料に戻すことです。

握らない強さ

NICE SKILLでは、自分がやるべき一手は打つけれど、その先まで全部を支配しようとしないことを、握らない強さと呼んでいます。

相手に変わってほしいときも同じです。

必要なことは伝える。

お願いする。

話し合う。

約束したことは確認する。

自分の境界も示す。

そこは、自分が打てる一手です。

でも、そのあと相手がどう考えるか。

変わるか。

変わらないか。

どのくらい時間がかかるか。

そこまで全部、自分の手の中には置けません。

伝える。でも、変えるところまでは握らない。

そして、相手の選択を見たうえで、自分の次の一手を決める。

それでいいと思います。

今日のちょっと

いま、誰かに

「変わってほしい」

と思っていることがあったら、一度だけ分けてみてください。

「私は、まだ伝えていない? それとも、もう伝えた後まで変えようとしている?」

まだ伝えていないなら、必要なら伝える。

もう伝えたなら、次は相手を動かす方法ではなく、今の相手を見て自分がどうするかを考える。

そこから。